kikuiric021219 「地方自治論」ノート報告

「原発立地と地域振興―新潟県柏崎市の事例」          k010114  菊入千賀子

 

1.原発立地自治体とは

 現在、日本には16の原子力発電所が全国21の市町村に立地している。原子力発電所が立地する場所は総じて「過疎」という問題がある。

 

2.新潟県柏崎市の概要

 柏崎市は新潟県の中西部に位置し、海と山に囲まれたまちである。古くは宿場町として栄え、縮布(ちぢみ)の集散地としても栄えた。さらに明治から昭和にかけては石油のまちとしても栄えた。しかし三方を山にかこまれた閉鎖的な地形であることや、交通条件の不備から発展が阻まれていた。また度重なる水害・雪害にも苦しめられたため、柏崎は長い間「陸の孤島」と呼ばれていた。昭和40年代には過疎化が最も深刻化し、高卒の地元就業率は県内最低の20%にまで落ちこんだ。そのため出稼ぎ者は4000人を超えるほど貧しく、人口も減る一方であった。「陸の孤島」の脱却を目指し、日本のエネルギー政策への貢献と地域振興を基本理念に掲げ、昭和44年に原発を誘致することを決めたのである。なおこの原発誘致には柏崎市の近隣市町村である刈羽郡西山町の出身である故田中角栄の力も大きかったといわれている。

 

3.柏崎刈羽原子力発電所の概要

 柏崎刈羽原子力発電所(以下柏崎刈羽原発と略)は、柏崎市と隣の刈羽村にまたがって立地している。設置者は東京電力株式会社で昭和53年に着工、1号機が営業運転を稼動し始めたのは昭和609月。平成9年に7号機が完成して以来、その総出力は821キロワットで世界最大となっている。崎刈羽原発で作られた電力は送電線を通して東京へ送られ、地元で消費されることはない。東京に到達するまでにいくらかのロスも出るらしい。

 

4.原発がもたらすもの

<経済効果と財政効果>

着工から全7機完成までの約20年間に柏崎市に投じられた建設費は2兆6千億円で、様々な波及効果を生み出した。雇用増加に伴い、過疎化に歯止めがかかり、人口も増加した。所得や消費の拡大にもつながり、投資額の20%にあたる5000億円の経済効果を生み出した。 加えて、電源立地交付金などの収入などによる自治体への財政効果も大きく、昭和53年から平成10年までの21年間で交付金は約250億円にのぼる。この原発立地が生み出した経済効果と財政効果を最大限に生かし、柏崎では大規模開発事業が行われてきた。

 

<大規模開発事業>

 柏崎で行われた開発は大きく分けて3期に分けられる。第1期は昭和49年から60年にかけて「陸の孤島」からの脱却のため、道路交通網の整備、長年苦しめられてきた水害や雪害対策として河川整備や消雪設備の整備を行った。第2期は昭和60年から平成7年にかけて行われた。社会・生活環境の整備を目標に掲げ、上下水道の拡張と教育文化施設ならびに医療福祉施設の整備を行った。第3期は平成7年から現在も進行中で平成16年にかけて行われる予定である。自立発展を目指し、二つの四年制大学と学園ゾーンの整備、研究開発産業団地、海浜リゾート、環境共生公園の整備、中心市街地再開発、情報化対策などが計画されており、この中のいくつかはすでに終了している。たとえば二つの四年制大学として、「新潟産業大学」と「新潟工科大学」が完成し約3000人の大学生が両大学で学んでいる。中心市街地再開発もほぼ完成しており、柏崎市の中心市街地である本町通り周辺は近代的な町並みに生まれ変わっている。今現在は環境共生公園の整備が行われている。

柏崎の中心市街地の様子(電源立地とまちづくりホームページより)

<電源立地交付金で作られた施設>

     柏崎ソフィアセンター(柏崎市立図書館)

     柏崎市立博物館

     柏崎市産業文化会館

     佐藤池運動広場

 

<原発事故への不安感・不信感>

原発が地域に与えるものはこれらプラスの効果だけではない。地域住民にとっては常に原発事故への不安・恐怖が常に付きまとう。他の原子力発電所や関係機関での原発事故や、当事者による事故隠しが発覚するしたがって、住民の原発への不安感、それだけでなく不信感も増す一方である。これに対して東京電力では視察ツアーのようなものを企画して、地域住民への理解を求めている。

また世界最大規模の出力の原発であるため、テロの格好の標的となる恐れがある。昨年の同時多発テロの際にも原発への攻撃の恐れがあり、柏崎刈羽原発でも警備等を強化していた。

 

5.電源立地三法

 電源立地三法とは1974年に制定された「電源開発促進税法」「電源開発促進対策特別会計法」「発電用施設周辺地域整備法」を総称するものである。

<電源開発促進税法>

 あらゆる発電施設の設置の促進と、石油に替わる燃料を利用した発電の促進が目的。その費用に当てるために、一般電気事業者が販売する電気に電源開発促進税を課す。つまり電力消費者が電気料金として電力会社にこの税金を納めるようになっている。この税金は政府の電源開発促進対策特別会計に納められる。

<電源開発促進対策特別会計法>

 電源開発促進税による収入を、発電所の周辺地域の整備や安全対策、そして発電用施設を円滑に設置するための交付金や補助金などの交付を行う。

<発電用施設周辺地域整備法>

 発電用施設の周辺地域における公共施設の整備を促進し、地域住民の福祉の向上を図り、発電用施設の設置を円滑にすることが目的。当該都道府県整備計画を作成し、それに基づいて交付金が支給される。周辺地域の公共施設の整備のために交付されるのが「電源立地促進対策交付金」であり、また発電用施設の設置の円滑化のための財政上の措置として、「電源立地等初期対策交付金」、「電源立地特別交付金」、「原子力発電施設等立地地域長期発展対策交付金」などが交付される。

 

6.浮かび上がる問題点

<カネにまつわる問題>

 柏崎市の隣にある刈羽郡刈羽村には電源立地交付金で建てられた生涯学習センター「ラピカ」(http://www.rapika.or.jp/hp/index.asp)という施設がある。ラピカは63億円の事業費のうち57億円を東京電力柏崎刈羽原発に伴う電源立地促進対策交付金として交付され、99年に完成した。この施設には文化・公民館施設、図書館、屋内外体育施設がある大きな施設である。しかし施設にある茶室の畳が設計段階で1枚13万円とされていたのに、実態としては一枚1万円のものが用いられるなど、不正な事実が次々と判明し、少なくとも340箇所判明した。これにより経済産業省は14000万円相当の返還を求める予定である。

 この問題は原発がもたらす「カネ」は不正に流用されることを明らかにした。

<原発依存症>

 今の柏崎が成り立っているのは、原発無しでは考えられない。道路交通網の整備などにより陸の孤島から脱却できたのも、過疎化に歯止めをかけたのも原発のおかげである。しかし、この交付金への依存症に陥っているのではないだろうか?

<安全性の問題>

 原発は安全であると言われてきた。テレビコマーシャルで耐震性や、放射能が外に漏れない仕組み等を強くアピールしてきたが、度重なる事故隠しでそれも崩れ去った。

<環境問題>

     海岸線の変化

     貝やクラゲの異常繁殖

     漁業への影響

 

7.原発反対運動

     刈羽村でのプルサーマル計画に対する住民投票→プルサーマル計画凍結への大きな影響となる。

     議会での推進派/反対派の対立

 

8.原発と柏崎市のこれから

     原発との共存

     プルサーマル計画に対して

     原発依存症からの脱却、自立は可能か?

     国のエネルギー政策のゆくえと柏崎刈羽原発

     交付金の不正流用問題

 

おまけ

     電気が東京に到達するまでに、かなりロスが出るらしい?

     電源立地交付金は、原発事故が起こった時のリスクの代償金?

参考サイト

電源立地と街づくり http://www.jcci.or.jp/machi/dengen/dengen.html

脱原発を実現する市民情報センター http://www.cnic.or.jp/index.html